機具岩

249号線を北上して富来あたりで、谷神(やちがみ)、生神(うるかみ)、相神(あいかみ)と立て続けに神がつく地名が出てくる。これらの地名は、出雲から寄り付いた神がいたことを物語る。「真・古事記」的に解釈すると、大国主命に求婚されて、出雲に嫁いだものの、ヌナカワ姫が出戻りしたことと関係があると私は考えている。

ヌナカワ姫は、大国主命の正妻であるスセリ姫にいびられて、能登へ帰国した。大国主命は連れ戻そうと、追手を差し向けたが、ヌナカワ姫は追手の船に向かって機織り機を投げつけて、出雲へ帰らないという意志をあらわにする。投げた機織り機が石化したのが「機具岩(はたごいわ)」(画像)。

大国主命はどうしても連れ戻したいと思い、自ら能登へやってくる。谷神(やちがみ)という地名は、大国主の別名「八千矛神(やちほこがみ)」に通じる。大国主がヌナカワ姫に再会した場所が、富来の相神(あいかみ)。しかし、ヌナカワ姫は説得には応じず、大国主はむなしく出雲へ帰国した。富来の「くじり祭り」の語源は、連れ戻し失敗の「しくじり」ではなかろうか。

ヌナカワ姫が能登に戻ってまもなく出産した場所が、富来の生神(うるかみ)。生神神社には、お産の井戸がある。生まれたのが、ミホススミ(建御名方命)。出産後、ヌナカワ姫は珠洲に宮を構えて暮らした。生まれた子はやがて、大国主命の子として、越国一帯を統治する神になる。

真・古事記

富来に神がつく地名が多い件